モノローグ

おい、そこの若造、ちょっとこっちへ来い。少し話でもしようじゃないか。futoshi

いくつだ? 21か。 若いな。 何の苦労もしていないツラしてやがる。

俺、誰だと思う。38年後のお前だよ。

そんなに驚くなよ、人間、だれだって年をとりゃ老け込むんだから。

それよりお前、気になるだろう? 自分の人生がどのようなものになっていくかを。

ほんの少しだけ、教えてやろう。

おまえは卒業後、そこそこ名の知れた会社に入り、希望通り海外勤務を経験する。

結婚するし子供もできる、まあまあ普通の暮らしと言えるだろう。

でも油断するな、災難も多いんだ。

交通事故、落下事故、荷崩れ事故、そして火事。

ありとあらゆる苦難に出会う。それも一歩間違えば命を落とすようなものばかりだ。

悲観するなよ、人間だれだって思いがけないことに出くわすものだ。

運命だと思って乗り切るんだ。

30代中ごろに大学時代の友人が突然の死を迎え、お前は祭壇で泣き崩れる。

また、お前を大切に育ててくれた両親も、やがてこの世を去る日が来る。悲しいだろうが耐えるんだ。いいな。

この3人の死で、お前の人生観は大きく変わってゆく。

どうせ最後は灰になるだけ、だったら生きているうちにやりたいことをやろうじゃないかと。

そして50を超えたある日、お前は常軌を逸した行動に走るんだ。

幼いころ、姉にもらった古い英和辞典で勉強を始め、英語バカになったおまえ。その本性が再び顔を出し、個人英語塾を開業するのさ。

 

こんな人生を知ったら、オマエ失望するだろうな。自殺したくなるかもな。 でも、ファンが結構できたんだぜ。

「あなたの教え方にはサラリーマン時代の苦労が肥やしになっている」と言ってくれる高齢の生徒。「せんせい見て、5級うかったよ」と叫びながら駆け寄ってくる小学生の生徒。

この感触、21のお前にはわかるまいが、今のおれはとっても満足だ。

そんなに悪くないぜ、お前の人生。 だから、自信を持って達者に暮らせ。

じゃあな。

21のオレヘ

59のお前より

 

 

 

 

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